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官能小説家、深志美由紀の日記

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女の庭

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――女はみんな、腹黒い。



花房観音という女性はなんと意地の悪い作家なのでしょうか。

というわけで、一通り原稿も終わり、「女の庭」をようやくじっくり読むことが出来たので感想です。



第一回団鬼六賞大賞受賞の花房観音さんの、初の幻冬舎での書き下ろし「女の庭」。
今売れて売れてたいへんなこの本ですが、いやぁ、面白かった!

はっきり言ってびっくりしました。
ふつう、大衆に受ける、売れている本と言うのは、ずいぶん毒気を薄めてあるものです。
それがあなた、こんなに毒を大盛りで、そこにたっぷり官能の蜜をまぶして、官能小説のかの字も知らず、花房観音と言う人がどんな作家かも分からず、突然こんなものを読まされた読者はぶっちゃけ中てられてしまうのではないか、と。


そのくらい、強烈な一冊でした。


ともかく、花房観音という作家はなんと意地の悪い目を持っているのか(褒め言葉)。
人間の、女の厭な部分をこんなにも明瞭に描くことのできる人はそう多くないと思います。
それぞれの女の、厭な部分、ずるい部分、傲慢で高慢で身勝手ででも寂しくて、切なくて、哀しい性分。
それが、痛々しいほどに鋭く描かれている。


ある教授の葬式で再開した五人の女をめぐる、それぞれの性と自立の物語。

女たちは大人になった友人たちを見てそれぞれに思います。「あの娘のほうが私よりも幸福そう。いいや、私のほうが幸福に見せなくちゃ――」

隣の芝生は限りなく青く、けれどそれより自分を幸福に見せたい。

女と言うのは、誰しもが心の中でそう願い、嫉妬し見下し優越感に浸って生きているのでしょう。
それをこんなにもはっきりと自覚させられる、ああできたら見ないことに、気付かないことにしておきたかったのに!――「女の庭」はそんな小説でした。



面白かったです。ああ、女ってこういう生き物だと。


女はみな残酷で優しくて、自由で、そして誰もが見えない籠に囚われている。

きっとこれを読んだ男性には、なぜこの女たちがこんな行動をしているか、何に囚われているのか分からないかもしれません。さらに言えば「こいつら全然友達でもなんでもないじゃん」とでも思うのではないでしょうか。

でもねえ、女の友情って、多くはこういうものなのだ。

恐ろしく強い自我の上にある、自分と比較する対象としての他人とのきずな。
あの娘のほうが幸福そう、羨ましい、ずるい、私の方が幸福にならなくちゃ、でなければ、あの娘がもっと不幸になればいいのに――ずるいずるい、羨ましい。そんな心の毒気を押し殺し、自分でも気付かないことにして、女たちは微笑むのです。

男のひとは、そんなに憎いなら見なければいいと思うかもしれません。
でも友達がいなくちゃ、やってはいけない。
だって自分ひとりでは、比較する対象がいなくちゃあ、自分がどのくらい幸福かも分からないでは、ないですか。

女たちは皆、ただ幸福でありたいだけなのです。
男が幸福にしてくれるのか、仕事が幸福にしてくれるのか、セックスか恋か。
否、結局自分を幸福にするのは自分のこころひとつ、それに必要なのはたまに会う女友達の視線、だったりするのではないでしょうか。



「女はみんな、腹黒い」。

腹黒い作者が、腹黒い読者に向けて垂らしたひとしずくの毒の蜜。

あまいあまいその甘露を、みなさんも味わってみてください。




ちなみに私は作中「里香」に一番共感しました。
全然立場は違うしお金持ちでもお嬢様でもなんでもないのですが、女を上がる恐怖と焦りと、守られる相手に裏切られている愚鈍さと鈍感さとバカさというどうしようもないところに他人とは思えないものを感じたね。

作中は大変爽やかに読めた彼女の物語がこんなラストに繋がるなんて、やっぱりたまたまったら、意地悪!

| ブログ | 16:32 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

新作は毛色が違うけどおすすめ〜

花房観音さんの
新作「おんなの日本史修学旅行」はついつい読んでしまいました。
上品な笑いではないですが、面白かったです!

birthday-energy.co.jp/
ってサイトは花房さんの本質にまで踏み込んでましたよ。才能が生かされているところに良さが出てるんだとか。今後に期待です!

| fuusen | 2013/09/06 00:22 | URL | ≫ EDIT

コメントありがとうございます!
おんなの日本史は自費出版?で発行されていたときに買いましたが、凄く面白かったです。
歴史に切り込んだ切り口はさすがですね!

| 深志 | 2013/09/10 13:45 | URL | ≫ EDIT















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