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官能小説家、深志美由紀の日記

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桐野夏生さんの「IN」を読了。


故人である某作家の実話的小説に登場する謎の○子の正体を、編集者と長い不倫の末に別れた一人の女性作家が自らの経験に照らし合わせながら追い求めてゆく物語です。

物語の中の作家「タマキ」が○子を主人公に据えた物語のタイトルは「淫」で、テーマは「恋愛における抹殺」。終わった恋愛において、相手を忘れ去る、関係を絶つ、相手の心を無視する行為についてだそうです。
そして桐野さんがタマキを主人公に据えた物語のタイトルが「IN」。
テーマはもちろん「恋愛における抹殺」ということも含まれているでしょうが、全体を通して言いたいのは「作家の業、実在の人物を物語にすること、フィクションと真実について」とでもいうのでしょうか。

「緑川未来男」という作家が描いた○子との不倫、それをきっかけにした夫婦間の激しい諍いの物語は一見して真実よりも真実らしく、まるで実話をそのまま書き留めたかのようなのですが、そこに登場する人々に話を聞いてゆくと実際にはいくつもの虚構があります。小説なのだから当たり前です。
フィクションを真実にするには真実よりも緻密に作りこまなくてはいけない、でないと真実がフィクションになってしまう、と最初にタマキが語っている通りです。

その真実とフィクションについて、そこに描かれた人々の人生への影響について、他人を貶めてまでも自分の作品を光り輝かせる作家の業についてを、しみじみと考えさせられました。

それにしても作中に何人もの作家が出てくるのですが、その一人ひとりの作品、文章、言葉づかいを書き分ける桐野さんの筆力がものすげぇ、作家ってすげぇなあと感激しきりです。

ううむ、私はまだまだ作家ではないな。



「いいわね、あなた。小説は悪魔ですか。それとも、作家が悪魔ですか?」

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