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官能小説家、深志美由紀の日記

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香りの話

数年ぶりに長文ブログ「週刊えむいち」更新。
全然週刊じゃないですがまあこれからたまには書こうと思います。







芳香剤が苦手である。

カーコロンとか柔軟剤とか芳香剤とか、とにかくケミカルな香りが苦手だ。
鼻はそう良いほうではないのだけれど、嗅いでいると頭が痛くなってきてしまう。



実家では祖母が下の処理がうまくなくなってきて下着を汚すようになり、祖母と折り合いの悪い母が洗濯を分けるにあたり溜めた洗濯物が匂うとか

はたまた、まだらボケで一部の記憶が何十年も昔に戻ってしまった祖母は古い田舎の風習でトイレットペーパーを流さずゴミ箱に捨てるようになってしまいそれがまた匂うだとかで、

母がバカでかい芳香剤をいくつも買って来て家に置くようになったのが私の部屋まで臭って来るので、それは本当に勘弁してくださいってことでトイレの芳香剤代わりに重曹に落としたアロマオイルを置いて貰っていた。トイレの芳香剤らしく馴染みのある香りってことで、レモンとレモングラスとペパーミント。

不思議と、私は母とは逆に汚れ物の匂いは気にならない。 とにかく芳香剤がつらい。


アロマオイルは大抵大丈夫なので元夫と暮らしている時からよく使っていたが、お香はいわゆる線香や白檀系の「香」は大丈夫だけどチチカカ系の安いインセンスはつらい。咳が止まらなくなることもあるので多分体質の問題なのだと思う。





最近は新居の下水が少し匂うので、芳香剤の代わりに今まで試したことがないちょっと珍しいオイルを買った。


そこでつらつらと香りについて考えていて、そう言えば私は香水を自分で選んだことがほとんどないな、と気が付いた。


高校生の頃から愛用していて今は廃版になってしまった香水は、大好きだったけど、もとはと言えば年下の女の子が「みゆきさんに似合うと思って」と言ってくれたものだった。
少し粉っぽい、くどいほどに甘い女っぽい香りだった。彼女はもしかしたら私をあまり好きじゃないのかもしれない、と思っていた子なのだけど(同じ時期に貰ったクッキーに凄い量の動物らしき毛が入っていたことがあったのだ)、ひょっとすると何か嫌味のつもりだったのかもしれない。

だけど私はそこも含めてなんとなく気に入って、廃版になるまでそれをずっと使っていた。
今は色褪せた最後の一本が使えずに残っている。



水商売をしていた時に毎晩つけていた、嫉妬を意味する香水はホステスを始めて一番最初にお客さんが私にくれたプレゼントだった。
もう誰だったかも覚えていないが、やはり「君に似合うと思って」と彼は言った。
それはいかにもザ・ホステスという感じのイメージで、バブリーなのにどこか大衆的な、動物的で適当にセクシーな香りで、十九歳の私には少し大人びていた。
やはり私はそんな所が気に入って、夜の仕事を辞めるまでずっと愛用した。




大人になって初めて自分で好きな香りを選んでみたら(それは最初に愛用していた廃版の香水に少し似た甘い香りである)、香水に詳しい友達は「それって女子大生とかが最初に着ける香水よ」と笑った。
友達も当時の恋人も、君のイメージではないと言う。
私は少し恥ずかしくなったけれど、そもそも、確かに最初に自分で選んだ香りなのだからある意味理に適っていると思ったりもした。


ちなみにその恋人は自分が昔付き合っていた女の香水が好きだった、というので、それから私はまったく同じものを付けて彼に会いに行くようになった。
偶然にも、私が若い頃大嫌いだった女が付けていたのと同じ香水だ。
鼻と胸にシリコンを入れて、当時私が好きな男と付き合っていた女である。ご丁寧に、「私は彼と付き合ってるの」というこれ見よがしの手紙をくれたことがある。
彼女はその後AV女優になったが契約を果たさずに逃げ、十年も経った最近またその世界へ出戻ったと聞いた。私にとってその香りは嫉妬と牽制と、承認欲求のためのセックスの象徴だ。
彼とはその通りの付き合いで終わった。
自分でつけろと言ったのに、結局一度も彼はその香りを褒めなかった。





しかして私は人が私のために選んでくれる香水が好きだ。
そこには大抵、多少の皮肉が込められている。
誰も本当は私など見てはいなくて、彼らの目というフィルターを通した香りがそこにある。
それも含めて楽しい。



誰かが次に私らしいと思う香水を選んでくれるまで、似合わぬと笑われた香りを身に纏っているつもりだ。
本当はその無知さにまつわる少しの羞恥心こそが私らしいのだろうと思う。



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